東京藝大の多様性

学長メッセージ

ARTSの色

「色の数はいくつありますか?」と聞かれたらなんて答えますか? 12色、24色、100色、たくさん・・・。「赤色を想像してください」と言われて頭の中で赤色をイメージした時に、その自分の赤色は同じ質問をされた人と全く同じ赤色だと思いますか?・・・赤色と黄色を混ぜたらオレンジ色っぽくなりそうですが、そのオレンジっぽい色は何種類できますか?・・・色に「赤」という名前があることは一見便利ですが、「赤」は「赤」だけでないから、ちょっと困る時があるような気がします。言葉もこの世にあるものの認識を他者と共有するには都合がいいよくできた発明品ですが、限定されてしまいそうでちょっと丸々信用することはどうかなとも想う時があります。これとあれを区別する時に線を引くことによってこれとあれははっきりしますけれど、その線には幅があって、線の中でもこっち寄り、とあっち寄りがあるような気がします。なのではっきりした線ではなく、線の端は滲んでいるのが認識としては近い気がします。世の中の全ての物や事や万物は滲んだ線で繋がっていることを想像してみてください・・・。それがARTSの色のような気がします・・・。

東京藝術大学長 日比野克彦
2022年9月24日